研究課題
本研究の目的は、協力関係形成維持メカニズムを探ることである。最終年度に念願の実験室整備も終わり、最終的な検討に入ることが可能となった。本研究の課題である1)秩序維持に重要な役割を果たすとされるフリーライダーを罰する人が利益を享受する状況がどの程度発生するかを行動実験によって検討すること、2)協力関係形成維持に重要な他者からの評判形成の仕組みを検討することの2点を中心に、個別実験および対面型の大人数実験の両方を実施して多角的に検討を行った。まず、1に関しては、比較的大規模な集団で繰り返しのある公共財ゲームを実施し、毎回結果をフィードバックした上で各成員に罰の機会を与えることで、フィードバックと罰への投資の関係を検討した。その結果、集団の協力率は徐々に低下すると同時に、初期段階では出現した罰行使者が次第に姿を消し、結果として、集団全体が共貧状態に収束した。罰行使者の利益は最終的にはフリーライダーよりも低くなり、各成員間に地位や役割による格差が存在しない場合には、利他罰そのものの行使による利益の享受は難しい可能性が示唆された。このことは、社会規範の維持において、個人的なコストを負担して利他的に行動する成員にのみ依存した形では全体的な協力率の向上は難しいこと、他の成員の行動のフィードバックがあることでかえって協力の達成が困難になる可能性を示唆しており、理論研究で想定される強い互恵性による規範維持の妥当性の再考をせまるものであろう。また、2で検討する評判形成の仕組みについても上記の実験で同時に測定しており、現在データ解析を進めている段階である。さらに、2に関しては、実験室実験を用いて評判情報に対する敏感さを検討する実験をシリーズで実施しており、全ての成果に関して、現在、解析と共に論文を執筆中である。本研究全体として当初の計画および検討目的は十分遂行できたといえる。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Personality and Individual Differences
巻: 56 ページ: 206-209
The Journal of Social Psychology
巻: 154(1) ページ: 74-88
DOI:10.1080/00224545.2013.855158
Psychological Science
巻: 印刷中 ページ: inpress
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