研究概要 |
本研究では,先行研究において開発を遂げた多層指導モデルMultilayer Instruction Model(MIM;海津他, 2008)をいかに多くの子ども,教師,学校,地域へと広げていくかに焦点をおいた。これまで一部の学年,教科においては,一定の効果が認められ,モデル自体の有用性は窺えたものの,教育現場からの一部のニーズへの対応に留まり,課題が残されたからであった。 そこで,よりMIMの効果を広く普及するため「①広範囲な地域(市内全域等)でのMIMの導入という形での汎用化」,「②従来のMultilayer Instruction Model-Progress Monitoring(MIM-PM;海津他,2008)を使い,他学年での学習のつまずきの早期把握・支援へという形での汎用化,および異教科,異単元でのMIMの導入という形での汎用化」をめざした。 ①については,市内全小学校でMIMを実施した。「一地域」での実践ではあったが,異なる諸条件を有する学校の集合体において,焦点とした「国語科の読み」の得点,子どもの「読み」に対する見解,教師の指導への姿勢の面で効果がみられた。 ②については,MIM-PMという読みの流暢性に関するアセスメント(小学校1,2年生を対象に標準化された検査)の他学年への適用を行った結果,このような通常の学級で簡便に実施し得るアセスメントが,個人の有する学習面(読み)の特性の一端を反映する様子が窺え,つまずきの早期把握,早期支援を実現し得るツールとしての可能性が確かめられた。 異教科,異単元でのMIMの導入では,「助詞」「繰り上がり」「九九」「ローマ字」等,他の単元や教科等でつまずきを示す子どもへの対応をめざし,理論(「アセスメント」と「指導法」)と実践をまとめた。ただしこれらは事例研究に留まった。汎用化については次期研究への課題として残された。
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