最終年度は、平成23年度に公立小・中学校教師を対象とした質問紙調査の結果に基づき、以下のことを明らかにした。 第一は、教職を目指す者は、被教育体験期において世代や地域に関係なく類似した経験をし、教師になっていくことである。第二は、教職志望時期については、小学校教師は小学校の頃を、中学校教師は中学校の頃を指摘する者が多かったことである。第三は、教職選択の契機については、小・中学校教師ともに、被教育体験期に出会った教師、親や身内、教育実習の影響が強いことである。特に世代が若い者たちにおいては、出会った教師を指摘する割合が高い。第四は、教職活動を進めていく上での大学時代までの有意義な経験については、小・中学校教師ともに、教師や友人との交流、大学時代に学校現場で直接子どもと接した経験があげられることである。なお、大学での養成教育期間においては、インフォーマルな経験だけでなく、フォーマルな大学教育経験が、入職後の教師の実践を支える重要な要素となってきていることがわかった。第五は、入職後のプライベートな経験や、子ども・同僚・学外での重要な他者との日常的なインフォーマルな交流経験においては、教師の成長に与える影響に共通性があることである。どの地域でも教師は同じように成長していると言える。第六は、大学時代の学習経験、入職後の職位の変化、様々の研究・研修、社会的活動の影響力が、地域によってやや異なっていることである。各大学の教員養成のあり方や学生文化、各教育委員会の方針、現職教育システム、教育課題、教師文化などの違いが影響を与えていると推察される。 以上の研究成果は、国内外の教師研究における、ライフコースの観点に基づいた、現代日本の教師の力量形成のあり方についての最新知見として位置づけられる。また、今後の教師教育政策のあり方にインパクトを与える基礎的なデータとなりうるものである。
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