研究概要 |
局所体上の多様体に対する高次元類体論の研究を進めた。これまでこの種の研究では多様体が非特異かつ完備である場合のみが考えられてきたが、本年度の研究では完備でない多様体にまで拡張した。(非特異性は仮定する。)なお、基礎体が有限体の場合には類似の理論がSchmidtとSpiessにより展開されていた。 完備な多様体に対するこれまでの理論では、高次Chow群と基本群のアーベル商を結びつけるという形で理論が定式化されていた。完備でない場合にまでこの理論を拡張するためには高次Chow群の代わりにモチビック・ホモロジーないしSuslinホモロジー群を利用することが本質的であることに気づいた。実際、この群から基本群のアーベル商を対象とする相互写像を理想的な形で定義することに成功した。同時に、これらのホモロジー群の新しい(類体論的な)記述を得た。さらに、同じ方針によってBrauer-Manin双対の理論を完備でない(しかし非特異な)多様体へと拡張することにも成功した。両者は特に有理曲面の場合には相互写像や双対性について詳細な計算がなされた。以上の結果はプレプリント"Brauer-Manin pairing, class field theory and motivic homology"(arXiv:1009.4026)にまとめ、現在、投稿中である。 Bruno Kahn氏との共同研究で、高次Chow群やモチビック・ホモロジーを一種のMilnor K-群と結びつけるという研究が進展中である。この研究は上に述べた高次元類体論の一般化にも応用が見込まれる。
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