天文学的なダスト形成環境で見られる希薄なガス中でのダスト凝縮過程を調べるため、形成時の化学反応を考慮した非定常ダスト形成過程を世界で初めて定式化した。また様々なガスの初期密度・冷却率で計算した結果から、形成されるダストの平均半径と凝縮率は、ダスト形成時での過飽和比が増加するタイムスケールとガスが衝突するタイムスケールの比によって一意的に決定されることを明らかにした。さらにこの非定常ダスト形成の定式を用いて、初代星の候補である巨大質量星の超赤色巨星段階における星風中でのダスト形成計算を行い、その寿命の間に太陽質量程度の炭素質ダストが形成され得ることを明らかにした。 明るいIIn型超新星SN 2010jlの爆発の1-2年後の可視近赤外線分光観測を行い、1000分の1太陽質量ほどの新たに生成された炭素質ダストからの熱放射を捉えた。また水素輝線の減光波長依存性から、形成されたダストの半径は0.01ミクロン以下と小さいこと、さらにその親星の質量放出率が0.02太陽質量/年より高いことも明らかにした。一方、IIn型超新星SN 2005ipの爆発の1-6年後のX線観測を基に、爆発前の星の質量放出率を0.01太陽質量/年と導いた。これらの結果は、IIn型超新星が、その親星の大規模な質量放出の結果作られた厚い星周ガス中で起こった超新星であることを決定づけた。 超新星・AGB星でのダスト形成、衝撃波によるダスト破壊、星間空間での重元素降着によるダスト成長、ダスト同士の衝突合体・破砕過程を首尾一貫して取り扱うダストサイズ分布進化モデルを構築し、銀河の進化に伴う星間ダストのサイズ分布、および星間減光曲線の時間進化を計算した。その結果、銀河の初期段階では、星間ダストの平均半径は大きく減光曲線は波長依存しないフラットなものであるが、銀河の後期段階ではダストの破砕・成長が起こり、全体としてダストの平均半径が小さくなって減光曲線は急になることを明らかにした。
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