研究課題
以下の2種類の課題に取り組んだ。(i)若い太陽型星からの恒星風についての理論的研究我々の太陽も含め、若い太陽型星は表面に磁気活動が高く、そこから吹き出す恒星風(太陽風)も現在の太陽より大幅に大きいことが知られている。本研究では、表面の磁場強度と表面対流層に起因する擾乱速度を現在の太陽での観測値から大きくした場合に、どのように恒星風の質量流束などが大きくなるのかを、磁気流体数値実験の手法を用いて調査した。現在の太陽程度の活動度合の場合には、エネルギー注入の増加とともに磁力線を伝わる横波であるアルフベン波の反射が抑制されるため、少し擾乱速度や表面磁場強度を大きくしただけで、恒星風の質量流束が急激に大きくなることが判明した。一方で、現在の太陽の観測値より数倍以上大きなエネルギーを与えた場合は、輻射冷却によるエネルギー損失の増大のため、恒星風の質量流束の上昇が抑制され、頭打ちとなることが分かった。さらにこの性質を、恒星風周囲の惑星系へ与える影響、特に地球での生命の誕生を問題を投げかける、暗い太陽のパラドックスへと応用し吟味した。(ii)降着円盤の大局的磁気流体数値実験前年度より引き続き、鉛直方向の磁力線がある場合の降着円盤の大局的数値実験に取り組んだ。平成25年3月にようよく京都大学基礎物理学研究所、および、国立天文台に設置されているスーパーコンピューターを用いた数値シミュレーションが終了し、その結果を論文としてまとめ平成26年4月にAstrophysical Journalに掲載された。
2: おおむね順調に進展している
「研究実績の概要」で述べた2つの研究課題それぞれについて、以下に列記する。(i)若い太陽型星からの恒星風についてに関する研究課題は、当初の予定では現在の太陽風の理論モデルの精密化を目指していた。しかしながら、若い中小質量星の表面磁気活動や恒星風活動の知見が、特に太陽系外惑星系研究分野での重要度が高くなっていること踏まえ、若く活動度の高い恒星に関する研究に取り組んだ。このように、当初の研究計画を若干修正変更したものの、既に学術雑誌に論文を発表して、順調に進めることができている。一方、(ii)降着円盤の大局的磁気流体数値実験に関する研究課題では、2年前の東日本大震災後の電力事情の悪化に共なう大型計算機の縮退運転などや、予想し得なかった安定な長時間計算のための境界条件設定の困難さという事情が相まって、数値実験に当初の予定より長い時間が必要になってしまった。しかしながら、数値実験および数値データの解析が終了し、既に査読付き学術雑誌に論文が掲載されており、計画見直し後の予定に沿っておおむね順調に進めることができている。
上記に引き続き「研究実績の概要」で述べた2つの研究課題それぞれについて、以下に列記する。(i)若い太陽型星からの恒星風に関する研究課題については、上記で述べたように研究計画の変更を行ったが、引き続き活動性の高い若い恒星からの恒星風に関する研究に取り組む予定である。ここまでの研究では、太陽質量の天体に特化して調査を行ってきたが、現在、より数が多いと考えられている太陽よりも小質量の恒星からの恒星風に関する研究へと応用を開始している。特に、M型星と呼ばれる太陽質量の半分程度の質量を持つ恒星周囲の惑星系が近年多数発見されてきているが、このような小質量恒星周囲の惑星系に中心恒星からの恒星風が与える影響までも含めて、現在研究している。(ii)降着円盤の大局的磁気流体数値実験に関しては、数値データの理論的解析についての論文を既に発表したが、今後数値実験の結果を原始惑星系円盤へと応用した場合、どのように観測されるかに関して、簡易的な輻射輸送を考慮することにより、研究していく予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 4件)
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