本研究ではレニウムを用いてニュートリノ質量の測定を、超伝導検出器を用いて行うことを目的とする。本年度は、NbとAlを組み合わせたMKID (Microwave Kinetic Inductance Detectors)の開発と作製をおこなった。NbとAlは異なる超伝導転移温度を持つため、異なるギャップエネルギーを持つ。NbとAlを組み合わせることにより、付与エネルギーによってクーパー対が解離されて生じる準粒子を、ある領域に閉じ込めることができ、感度を増すことができる。また、Alの部分にReをはりつけることにより、Re-187のβ線のエネルギーを直接測定することができる。α線を照射したところ、異なる場所のMKIDの共振器が反応することを確認した。これは、α線がシリコン基板にエネルギーを付与し、それがフォノンとして伝わってMKIDによって検出されたものと考えられる。実際、共振器の場所とフォノン到達時間の差からフォノン伝播速度が1.1~1.3 km/sと得られ、また、到達距離も3mmであることがわかった。これは、他の先行研究の結果とも一致している。一方で、基板からのフォノンによる信号が予想以上に大きいことが分かり、これはRe標的をMKIDに装着しても、一部のエネルギーがフォノンとして基板に逃げてしまうことを意味する。超伝導検出器の専門家らと議論し、Alストリップの下に薄い酸化膜をひくことによりフォノンをブロックすることが提案された。実際、そのような構造の検出器を作製しα線を照射したところ、基板からのフォノンによる同期信号が無くなり、単チャンネルのみ反応することを確認した。この結果、フォノンブロックを敷くことにより、フォノンエネルギーを閉じ込めることができることが実証された。これは、Reなどの標的をMKIDに装着してもエネルギー分解能を損なわない方法を確立したといえる。
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