研究課題
我々銀河の基本構成要素である宇宙線は、発見から100年経った現在もその加速機構・加速源が解明されず、探査が続いている。本研究では、この宇宙最大の謎の探査が最終目的である。宇宙線は磁場や星間物質との相互作用でX線やガンマ線を放射する。従って、X線・ガンマ線を用いた天球探査は宇宙線加速解明への重要な手掛かりになる。今年度は引き続きX線・ガンマ線帯域で発見された宇宙線加速候補天体の研究を続けている。新たな宇宙線陽子加速源候補の発見(HESS J1702-420)、年老いたパルサー星雲での加速電子の拡散の様子(Vela X)など、多くの新事実をつきとめた。また、銀河宇宙線加速源の最有力候補である超新星残骸について系統的解析を行ない、衝撃波面での磁場の増幅と進化を考えると、若い時に非熱的X線で明るく、約1000年で急速に暗くなるという観測的事実をうまく説明できることをつきとめた。これは、衝撃波での磁場などの物理構造の進化を間接的ながらも捉えた初めての成果である。また、2014年打ち上げ予定のX線天文衛星ASTRO-H、2018年稼働予定のTeVガンマ線望遠鏡CTAの正式メンバーとして、それぞれの望遠鏡で達成可能なサイエンスとデザインのバランスを検討している。ASTRO-Hでは、軟X線撮像分光検出器(SXI)の開発チームにも参加し、主にコンタミネーション防止フィルターの設計や性能実験を担当した。さらに教育広報チームのリーダーとして、広報活動も主体的に行なっている。その他にも、白色矮星での宇宙線加速、銀河面背景銀河団の発見など、宇宙線加速に関連する様々な分野での成果も挙げている。
2: おおむね順調に進展している
各天体の観測、研究は当初の計画より早く系統的研究が進んでいる。一方申請者の妊娠で海外出張が出来なくなり、チーム間の交流が難しくなった。この点はテレビ会議などを多用することでカバーしている。
今後も個々の天体の観測研究、系統的研究、観測機器の開発の三本柱での研究活動を引き続き行なう。引き続き海外出張は難しい状況が続くが、テレビ会議の活用、海外からの招聘などを利用して共同研究者との緊密な連携をはかる。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
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http://www.phys.aoyama.ac.jp/~bamba/