研究課題
本研究は、金属絶縁体転移近傍の軌道の局所構造を実験的に明らかにし、軌道依存モット転移もしくは軌道液体の観点から強相関物理の再構築することを目的とした実験的研究である。本年度は、軌道の局所構造を決定する実験手法を確立するために、主にバナジウムおよびコバルト酸化物における軌道分解核磁気共鳴(NMR)実験を行った。超微細相互作用の異方性を解析することで、バナジウム酸化物の金属絶縁体転移およびその近傍の異常な金属相における軌道秩序および軌道依存帯磁率を明らかにした。特に、典型的なモット-ハバード系であるV_2O_3やフラストレート一次元系のK_2V_8O_<16>においては、高圧下での角度回転NMR実験から軌道状態の観測に成功した。高圧下の軌道状態の実験研究に関しては、これまでに例がなく、本研究によってNMRが有効な実験手段であることが示された。コバルト酸化物においては、軌道状態と磁気的相互作用やスピン転移の相関を調べた。特に、幾何学的なフラストレーションを有するCa_3Co_2O_6では、一次元強磁性相関を生み出す微視的起源である軌道状態を観測した。さらに、異方的なスピン相関を分離して観測し、相転移に伴う臨界指数を決定した。また、金属絶縁体転移およびスピン転移を有するLaCoO_3において、相転移に伴う軌道状態の変化および軌道揺らぎを単結晶角度回転^<59>Co NMRによって明らかにした。これまでの本研究により、3d軌道占有率および軌道依存帯磁率観測手段としてのNMR解析手法が確立され、今後さらに広範囲の物質への適用が期待される。
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