研究課題/領域番号 |
22684019
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
山口 明 兵庫県立大学, 大学院・物質理学研究科, 准教授 (10302639)
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キーワード | 低温物性 / 量子流体 / 超流動 / ヘリウム3 / スピン偏極 |
研究概要 |
p波凝縮によって超流動状態に転移することが知られているヘリウム3に関して研究を行っている。核スピンが完全に偏極したヘリウム3は、どのような超流動性を示すのだろうか?そもそも、超流動状態として安定に存在しうるのだろうか?本研穽の目的は、このような低温物理学における根源的な疑問を解明すことである。そのためにA1相と呼ばれるクーパー対が完全にスピン偏極した超流動の性質を利用して、高偏極超流動ヘリウム3の生成に取り組んだ。計画2年目の本年度では、前年度に行ったスピンフィルター実験セルの改良を試みた。前年度開発した液体ヘリウムの圧力をヒーターでコントロールした圧力トランスデューサーでは原因不明の発熱が突発的に起こることが観測され、磁場中で金属ダイアフラムを使用していたためである可能性がある。そこで、プラスチックフィルム(アルミ蒸着マイラー)製の圧力トランスデューサーを新たに作製した。耐久デストを行い、1気圧までの圧力を印加できることを明らかにした。また、スピン密度上昇時により常流体成分の流入を防ぐためのインピーダンスのきりいアルミナ粉充填型のスーパーリークの開発を開始した。アルミナ粉の粒径・充填方法などの検討を行い、X線トモグラフィーなどを使い均一に充填されているアルミナ粉充填スーパーリークを作製した。東大物性研の共同利用設備を使用したテストを今後行う予定である。兵庫県立大においても超低温実験を行う環境づくりでは、新たに断熱ヒートスイッチの部品作製や、冷凍機の配線作業を行った。以上の研究結果、計画について、低温国際会議(LT26,北京)と、日本物理学会年次大会(2012年3月)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に、東大物性研(千葉県柏市)の超低温施設を利用している最中に震災により、使用冷凍機が破損した。完全に研究がストップするということはなかったが、その修理作業を10ヶ月程度の間、実験進行と平行して行う必要があったため、やや当初計画より遅れがあった。また、セルに低温で予期せぬガスの漏れ(リーク)があり、それを同定する作業に思ったより時間を費やした。
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今後の研究の推進方策 |
冷凍機の修理も完了し、セルのリークの問題もほぼ解決した。最終年度に向けて、万全の体制で研究を推進する。
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