研究課題/領域番号 |
22684021
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
向山 敬 電気通信大学, 先端領域教育研究センター, 特任准教授 (70376490)
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キーワード | 原子・分子物理 / イオントラップ / レーザー冷却 / 超流動 |
研究概要 |
本研究ではこれまで全く別の実験系として扱われてきたイオントラップと中性原子のトラップを同一空間中に実現し、その両者の相互作用を利用して中性原子気体の局所的な物性の評価や局所的な励起を行う手法を実現する。 本研究では超流動の物理を研究する対象として中性原子6Liを、またこの原子種との混合系を作成した際のトラップの安定性・熱平衡への到達し易さなどを考慮して40Ca+をイオン種として選定した。実験ではトラップされたイオンからの蛍光をPMT検出器で観測するとともにCCDカメラで空間的な分布も測定した。精密な調整の結果、トラップしたイオンが10分程度監視していてもロスしない程度の長寿命を実現することができた。また、イオンの数を減らしてRF電場による加熱の影響を小さくしていくことで、イオンの結晶化の観測にも成功した。結晶化が見えたことからレーザーによってイオンが効率よく冷却されていることが分かる。 イオントラップについての実験準備が整いつつある中で、イオントラップと中性原子トラップの混合系を生成するためのチャンバーの作成を開始した。イオンと中性原子を混ぜる方法はいろいろな手法が考えられるが、量子縮退した中性原子と振動基底状態に落ちたイオンの混合系が最終目標であり、その目的に最も相性の良いと考えられる光ピンセットを用いた方法を採用した。この方法イオントラップと中性原子のトラップを別々の位置に作成し、光ピンセットの手法を用いて中性原子気体をイオントラップの位置に運ぶ方法である。今回我々はイオンと原子を同一空間に作成するチャンバーを作成し、イオントラップチャンバー側ではイオンが、中性原子チャンバー側では中性原子がそれぞれトラップされている状況をすでに実現することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イオンと中性原子の混合系を実現するためのチャンバーの作成とそのチャンバー内でのトラップの実現に成功しており、本年度の計画通りに研究が准行している
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今後の研究の推進方策 |
今後は光双極子による中性原子のトラップと移動を行う。現在所有している出力50Wのファイバーレーザーを用いて中性原子を磁気光学トラップから光双極子トラップに移行し、光強度を下げることで蒸発冷却を行い、原子の温度を下げて量子縮退を達成する。その後光トラップ用のレーザーを集光しているレンズを高精度スライドステージ上に載せた上でレンズ位置を動かすことでレーザーの焦点にトラップされている中性原子を移動させる。中性原子を移動させた際に加熱が生じることが予想されるため、必要があれば移動後に蒸発冷却を再度行い、量子縮退を維持する。このようにしてイオントラップ電極中の極低温イオンと光トラップ中の中性原子を混合させ、原子-イオン間の弾性、非弾性散乱特性が極低温の温度領域でどのように振る舞うかを調べる。
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