本研究の最終目標は、光格子に量子縮退領域まで冷却されたYb原子およびLi原子を捕獲し、YbLi分子を生成し、その物性的研究を行うことである。特に、電子基底、振動基底、かつ回転基底状態にあるYbLi分子が実現されれば、それはスピンを持った極性分子であり、量子スピン系の1つである、Lattice-spin模型を実現することができるなど、非常に注目されている。平成23年度までに、ボソン・フェルミ混合量子縮退系の実現を目指して、同時光双極子力トラップおよび量子縮退実現のための蒸発冷却の改良を行うことで、Li原子をYb原子による蒸発冷却で共同的に冷却することにより、フェルミオンである6Liとボソンである174Ybの混合系を用いて、BEC-フェルミ縮退混合系の生成にも成功していた。平成24年度では、原子数の増大を目指して最適化を行うとともに、光格子の実験系を構築した。これまでの光学系をすべて取り除き、新たに再構築するという困難な作業であったが、その結果、1064nmの波長を用いた3次元光格子にLiYb混合原子団を導入し、質量が重く光格子の影響を受けやすいYb原子を用いて、光格子の影響を観測することに成功した。また、YbLiの分子生成の手法として、基底状態Liと準安定状態Yb原子間のフェシュバッハ共鳴法を用いることを提案し、3次元光格子中での準安定Yb原子生成を確認した。以上の結果は、世界で初めての成果であり、その意義はとても高い。さらに、3次元光格子中のYb原子を用いて準安定状態の2原子分子の生成にも成功した。3次元光格子中で制御された形での生成は世界で初めての成果であり、この意義はとても高いと考えている。これらの成果を各種学術会議、学術誌等での発表を行った。
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