従来、宇宙のダストは平衡に近い条件で生成すると考えられてきた。これに対し、気相からの凝縮実験によりナノ粒子の生成する温度場と濃度場を、干渉計を用いてその場観察した。その結果、均質核生成を伴う凝縮においては極めて大きい過冷却が必要であるという、既成概念とは完全に異なるデータを得た。これは、均質核生成は非常に起こりにくいイベントであることを意味する。また、生成したナノ粒子の個数を核生成理論から期待される値と比較したところ、実際の粒子数は理論値よりも1-2桁少ないことが分かった。これは、凝縮によって生じた結晶核が単純に成長するだけでなく、接合成長過程に伴って核の数を減らしていることを意味する。さらに、古典的核形成論に従って、表面エネルギーが核生成頻度を決めていると信じられてきたのに対して、半現象論的モデルを用いた解析の結果、核生成頻度はダイマーの結合エネルギーに対応する第二ビリアル係数に強く依存していることが示唆できた。つまり、解離エネルギーが小さい物質は、粒子の成長における接合成長の寄与が小さい傾向になる。本成果は、(少なくとも最初の)ダストは超高過飽和な想像以上の非平衡環境下で生成する可能性を示唆している。
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