研究課題/領域番号 |
22684025
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
加藤 雄人 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (60378982)
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キーワード | 超高層物理学 / 磁気圏・電離圏 / 宇宙科学 / 放射線帯 / 非線形波動粒子相互作用 / ホイッスラーモード / 計算機実験 |
研究概要 |
本研究は以下の3つの研究課題を柱にして遂行した。 [A]非線形波動成長理論に基づくトリガードエミッション励起過程の研究 [B]実パラメータ計算によるコーラス放射励起過程の定量的解明 [C]超並列計算に対応した放射線帯電子加速シミュレーションコードの開発 本年度の研究実績は以下の通りである。 本研究で用いるシミュレーションコードの演算効率の向上により、コーラス放射の再現実験を用いたパラメータサーベイが、現実的な計算機リソースの範囲内で可能となった。このため、当初予定していたトリガードエミッションの計算機実験に加えて、計算機実験結果に示される波動特性と非線形波動成長理論との比較をコーラス放射に関しても実施した。コーラス放射の励起過程に関するパラメータサーベイでは、コーラス放射の励起過程でエネルギー源となる、温度異方性を持つ高エネルギー電子の数密度を10%ずつ増減した場合の計算機実験を、他の初期パラメータは同一の値を用いて実施し、再現実験の結果に見られるコーラス放射の波動特性の変化に着目した。その結果、高エネルギー電子の数密度が10%変化することにより、発生するコーラス放射の波動特性が大きく影響を受け、条件によっては波動の非線形な成長過程が生じないことを初めて示した。また、計算機実験により再現されたコーラス放射の周波数変化率、ならびにコーラス放射発生に至る波動振幅の閾値について、理論に基づく予測と比較し、コーラス放射の発生過程が非線形波動成長理論により説明し得ることを定量的に示した。この成果は学術論文として発表し、また、1件の招待講演を含む国内外での学会発表を5件行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、計算機資源の制約により、非線形波動粒子相互作用のパラメータサーベイをトリガードエミッションの再現実験で代用する予定であったが、シミュレーションコードの演算効率の向上により、コーラス放射の再現実験を直接理論との比較に用いることが可能となった。またその結果からは、コーラス放射の周波数変化率が波動振幅に比例することに加えて、発生過程の閾値の存在も明らかとなり、研究計画は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画最終年にあたる平成24年度は、実パラメータ計算によるコーラス放射発生の再現実験を実施し、現実の磁気圏環境下で生起するコーラス放射励起過程を定量的に理解する。また、京都大学・名古屋大学を始めとする全国共同利用機関との共同研究により、大規模な計算機実験が実施可能となる見込であることから、開発中のコードを用いて数百~千コアを超える超並列計算を実施し、研究課題[C]として挙げる「超並列計算に対応した放射線帯電子加速シミュレーションコード」を完成させる。
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