研究課題
本年は海洋の主要な炭酸塩生産者の一つである有孔虫の細胞内pHと、環境のpHの環境に着目し実験を実施した。浮遊性有孔虫を海水のpHが低下したとき、細胞内のpHがどのような影響を被るかを検討した。海水のpH条件を7.5,7.9,8.1の三条件とし、pH変動を蛍光で示すHPTSという試薬を取り込ませて観察した。その結果、意外なことに細胞内のpHは類似の傾向であった。すなわち、周囲のpH条件によらず石灰化中の細胞内のpHは9前後まで高まっていた。一方で、別の実験で殻の成長を比較したところ、pH条件が低いほど、期間中に付加したチャンバーの数や、一つ一つのチャンバーの大きさに違いが見られ、pHが低いほど殻が小さくなる傾向が見られた。有孔虫細胞内の環境を保つために、より多くのエネルギーを費やしており、そのため成長に差が出ることが示唆される。現在国際的な社会問題となっている海洋酸性化がこのまま進行すると、有孔虫の成長、ひいては生産量に大きな影響が出ることも懸念される。本成果は国内外の学会で発表し、大変高く評価された。また、新規にラマン分光顕微鏡を導入した。これによって有孔虫類が石灰化する際に、微細な部位で結晶化がどのように進行するか具に観察することができるようになる。本年は震災の影響もあり納品が遅れたが、来年度から他の分析法と組み合わせ、石灰化過程の解明に供する。
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