研究概要 |
本研究課題では、ダイヤモンドアンビルセル高圧装置とブリユアン散乱測定法を用いてマントル最下部まで(深さ約2900km; 圧力約135GPa)にいたる超高圧高温状態のマントル鉱物の物性研究を行い、高温高圧条件における鉱物の弾性波速度及び弾性定数を決定し、最下部マントルにいたるまでの全下部マントルのダイナミクスを解明することを目的とする。鉱物中の弾性波速度を光学的手法により非常に精密に直接測定することが可能であり、地球科学分野においてごく最近、非常に興味深い結果を出しつつあるブリユアン散乱の物性精密測定の技術に注目し、本技術と静的に地球中心部までの温度圧力条件の発生が可能なレーザー加熱式(及び外熱式)ダイヤモンドアンビルセル装置とを組み合わせることで、マントル最深部にいたるまでの温度圧力条件における構成鉱物の弾性波速度と弾性定数を決定し、下部マントルのダイナミクスを定量的に明らかにすることを目指し、MgO,MgSiO3,(Mg,Fe)O,Al-MgSiO3に関する下部マントル温度圧力条件下での弾性波速度測定に成功した。また、SiO2ガラス及びMgSiO3ガラスの200万気圧を越える超高圧力条件で弾性波速度測定に成功した。本実験結果から、下部マントルは上部マントルよりもよりケイ素に富むモデルが整合的となり、地球のマントルは上部と下部で化学組成が異なるということを実験的に実証した。このことは地球が形成初期から上部と下部マントルでことなる対流が卓越していたということを強く示唆している。また地球の全岩組成は、始原的隕石であるC1コンドライト的な化学組成で最も良く説明できることも分かった。
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