研究概要 |
本年度は、深海底に生息しているアーキア(古細菌)が、わずかなエネルギー源を有効に活用するために発達させたと考えられる新しい代謝経路を発見した(Takano et al.,Nature Geoscience,3,858-861)[1]。深海底のアーキアはエネルギーの低い深海底において、周囲の環境中に含まれる有機物をリサイクル(=再利用する)する究極のエコ戦略によって、エネルギーをセーブしながら暮らしているという微生物生態学的な特徴を明らかにした。 「アーキア」と呼ばれる原核生物は、海洋や海底堆積物中におけるその分布や量が、従来考えられていたよりも大きいことが最近になって明らかになり(Lipp et al., Nature, 2008)、様々な分野から注目を浴びている。しかし、海洋性のアーキアは、培養が難しく、海水や海底堆積物中でどのような活動を行っているのか、またどれくらいの活性をもっているのか(どれくらいの速度で代謝しているのか)といった基本的な性状でさえも不明な点が多かった。そこで、世界で初めて海底の現場(最大405日)でアーキアを培養する新たな実験手法を応用し、精密なバイオマーカー解析により、アーキア由来膜脂質の分子内同位体比を評価した。また、アーキア(ユーリアーキオータ門、クレンアーキオータ門)の群集構造は、16SrRNAおよび定量PCRで解析した。本研究によって、従来の手法は、アーキアの活動度を過小評価しており、これまで推定されてきた活動度よりもかなり大きなアーキアの活動度が示唆される。つまり、アーキアが海底における物質循環に従来考えられていたよりも大きな役割を果たしていると推定される(日本学術振興会ニュースレターおいて、研究成果トピックスに掲載)。 [1]http://www.nature.com/ngeo/journal/v3/n12/full/ngeo983.html
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