研究課題
海底下の原核生物に焦点をあて、その微生物生態を分子レベルで追跡する研究を進めた。生物地球化学サイクルを炭素形態で見ると、海洋の基礎生産を担う光合成生物は、最も酸化的な炭素形態のCO_2を有機態炭素のCn(H_2O)mに変換される。そして、海底に堆積した有機態炭素は、海底下に優勢なアーキアのうちメタン生成菌によって最も還元的な炭素形態のCH_4に変換される。この炭素循環のうち、光合成独立栄養系と化学有機従属栄養系のリンケージを直接検証する目的で、^<13>C-Chlorella sp.をトレーサーとした難培養性アーキア群集の現場培養実験を行った。相模湾海底(水深:1453m)での長期間培養(405日間:cf.Nomaki et al.,MEPS,2011)を行った後、アーキア脂質分子の分子内炭素同位体組成から、^<13>C-光合成産物を追跡し、海底下に棲息するアーキアの生態について考察した。次に関連する室内培養実験を行うため、標品の生合成、化学合成(筑波大学・野本研究室との共同研究)、昨年導入した高速液体クロマトグラフィーによる精製を完了し、分子トレーサーの改良を行った。また、本研究で確立した分析法のアプリケーションとして、統合国際深海掘削計画(IODP)の第316次航海で採取された南海トラフ大断層帯(巨大地震発生帯)に棲息する未培養性アーキアについて、リピドミクス(包括的脂質解析)を行った(ブレーメン大学および高知コアセンターとの試料共有)。
2: おおむね順調に進展している
分子レベルで精密な評価を行う場合、抽出、分離、精製、同位体比の精度・確度保証などの一連の作業は、比較的時間と手間のかかるラボワークであるが、分析方法の最適化を含め、効率的に研究を進めている。また、論文への掲載を順次進めており、順調なペースである。代表的な研究結果は、新聞、インターネット配信記事、雑誌、機関誌でも紹介されている。
当初の研究計画に沿って、オリジナルなデータの蓄積と統合モデルの構築をさらに進めていく方針である。また、必要に応じて、パブリックアウトリーチ活動を展開する。
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Bulletin of the Chemical Society of Japan
巻: (印刷中)
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http://www.jamstec.go.jp/res/ress/takano/