研究概要 |
初年度は発散磁場配位中高周波プラズマ中の電子エネルギー分布制御によるダブルレイヤーおよびイオン加速エネルギーの制御を原理的に実証することを目的として,電子銃を用いて高エネルギー電子を生成し,プラズマ電位構造やイオン加速エネルギーの精密計測を行った.その結果,高エネルギー電子が存在する条件では,磁場強度の増加に伴いダブルレイヤー電位降下の増加が起こることが実験的に明らかになり,付随してイオンビームエネルギーも増加することを明らかにした.また理論的な解析では,下流域はマクスウェル分布を仮定した粒子バランスにより電子温度を定式化し,ダブルレイヤー上流域は非マクスウェル電子エネルギー分布関数を粒子バランス方程式に導入することで,そのモデル化に成功した. 一方で,プラズマ源の低消費電力化を目的としたダブルレイヤーイオン加速対応の永久磁石利用発散プラズマ源の大口径化,高密度化,イオンビーム発散の物理機構等に関して実験的研究を行った.その結果,これまでは直径6.5cmであった当該プラズマ源を直径14cmにまで拡大し,永久磁石配置を最適化することでダブルレイヤー形成と直径14cmのイオンビーム励起に成功した.更に高周波電力を3kW程度まで増強することで,最大密度3×10^<12>cm^<-3>の高密度プラズマの生成に成功した.また,動作ガス圧を上昇させた場合にはイオンビームが発散することを観測し,それがプラズマ電位構造が半球状へと変化することに起因していることを明らかにした. 更には,オーストラリア国立大学のスペースシミュレーションチャンバーに直径6.5cmの永久磁石利用発散プラズマ源を設置し推力計測系の立ち上げを行い,推力の直接計測を行うことに成功した.ここでは高周波電力900W(実効電力600-700W)において最大4.5mNの推力を得ることに成功した.
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