研究概要 |
前年度に引き続き,永久磁石利用プラズマ源の大口径化に関する実験的研究と粒子バランス方程式とパワーバランス方程式を用いた解析を行った.大口径化して得られるプラズマの各種パラメータは,上記バランス方程式にプラズマ空間分布の効果を取り入れることでよく説明できることを明らかにした.また永久磁石を用いて形成する磁場配位を最適化することで,10^<13>cm^<-3>程度の高密度プラズマ生成に成功した. 電子加熱によるダブルレイヤー制御法の確立を目指して,現有の直径60cmの真空容器に設置したプラズマ源にスロットアンテナを設置し,500MHz帯高周波電力を投入することで,電子サイクロトロン共鳴条件を満足する条件下では安定にアルゴンプラズマを生成できることを明らかにした.また電磁誘導電子加熱を目的として,広範な範囲で周波数制御を実現するために,パワーMOS-FETを用いたフルブリッジ方式インバーター回路の制作を行った.現時点では出力電力は100W以下となっているが,高周波ループアンテナに50-300kHz帯の高周波電力を投入し,安定なプラズマ生成を実現できることを明らかにした. さらに,オーストラリア国立大学所有の比較的小型のスペースシミュレーションチャンバーに設置したヘリコンプラズマスラスターの推力計測を行い,その発生機構の一部は,電子圧力による力と電子反磁性電流によるローレンツ力によって説明できることを明らかにした. また,岩手大学所有の直径60cmの真空容器内部に,比較的強磁場の発生が可能なプラズマ源を設計・制作・設置して,その推力計測を行ったところ,10mN程度の値を得ることに成功した.またここで計測した推力から電気推進機の性能指標である比推力を求めると,約2500-3000secの値が得られることが明らかになった.
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今後の研究の推進方策 |
当該課題の最終年度では,電子サイクロトロン共鳴加熱によるダブルレイヤー制御と推力への効果に関しての実験を進めると同時に,ヘリコンプラズマの流速や回転速度などの計測法を導入することで,推力発生機構の詳細とモデリングの実現につながる基礎データの収集を目指す.また,これまでの実験で観測されてきたイオンと電子のエネルギー分布関数に関するデータをベースとして,ダブルレイヤー形成機構に関する理論的な考察を行う. これらのデータを基礎として,将来的には高効率のヘリコンプラズマスラスターの開発へと展開する.
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