近年の炭素材料研究において非平面π共役系の重要性が認識されている。中でもベルト状縮環π共役系分子(πベルト)はそのユニークな構造から注目を集めているだけでなく、その有機合成はチャレンジングなターゲットとして位置づけられている。本研究では、ボウル型π共役系分子を活用する独自の合成アプローチからπベルトの有機合成を行い、フラーレン、カーボンナノチューブ、πボウルに次ぐ非平面ナノカーボン物質群として特性を顕在化させることを目指す。今年度は、ボウル型π共役系分子スマネンをビルディングブロックとして用いたπベルト合成法の開発に取り組み、その最初の段階としてスマネンの連結手法を検討した。 スマネンのカップリング反応を検討した。パラジウム触媒によりスマネン同士をカップリングさせた2量体を合成した。その際、マイクロウェーブ照射による加熱が反応に有効であった。得られた2量体は、紫外可視吸収スペクトルおよび発光スペクトルからπ共役系の拡張と青色の発光特性が明らかになった。また、量子収率はスマネンと比べ10倍上昇した。さらに、固体状態では発光波長が顕著に長波長シフトすることも明らかになった。 スマネンを塩基で処理した後に酸化剤により酸化的カップリングを行った。その結果、用いる塩基と酸化剤の量をコントロールすることで、2量体とオリゴマーの作り分けができることが明らかになった。オリゴマーは最高10量体まで観測された。また、2量体を2量化することで4量体も得られた。
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