研究課題
本研究は、我々が達成した独自の一酸化窒素(NO)還元サイクルに注目し、各ステップについて変換効率を上げるとともに、触媒反応への展開を図る。そのため、そのサイクルの中でも、特異なN-N結合を有する二核錯体に注目し、そのN-N結合と架橋配位子との関連について調査した。我々が達成したNO還元サイクルにおいて、特筆すべきは、二核ルテニウム錯体上に誘起された特異なN-N結合であり、このような結合様式を有する二核錯体を世界に先駆けて、単離することに成功した。この二核錯体は、2つのルテニウム金属間をピラゾラトおよび塩素配位子で架橋されている。必然的に、その架橋配位子を変えることにより、ルテニウム金属間の距離が変化し、その鍵となるN-N間距離も変化すると考えられる。また、電子的な影響を変化させることも可能となる。そこで、今年度は架橋配位子の異なる新規な二核錯体を合成し、それらのN-N間距離と結合性相互作用との関係について調査した。2つの酢酸イオンが架橋したオキソ架橋二核ルテニウム錯体がすでに報告されており、これをもとに過剰のピラゾールと反応させることにより、2つのピラゾラトで架橋された新規オキソ架橋二核錯体を単離した。この錯体に、当量のプロトンと反応させることによりヒドロキソ架橋錯体を単離し、さらに当量のプロトン存在下、NOガスと反応させることにより、ジニトロシル二核錯体を単離した。また、ジニトロシル錯体を還元させることにより、目的とするN-Nカップリング錯体の単離に成功した。これらの錯体の単結晶X線構造解析およびサイクリックボルタンメトリーの結果、塩素架橋からピラゾラト架橋に変えることで、ルテニウム間の距離は長くなっているもののN-N間の距離はほとんど変化していなかった。むしろ、還元されにくくなっており立体的な効果よりも電子的な効果の方が大きいことが分かった。
2: おおむね順調に進展している
NO還元サイクルにおいて、鍵となる新規N-Nカップリング錯体の単離に成功した。これにより、架橋配位子の影響についての理解ができた。
新規N-Nカップリング錯体の合成に成功したため、この錯体をもとに、N_2O分子の脱離のステップについての研究を行い、NO還元サイクルを達成させる。これにより、サイクルの変換効率の向上に関する情報を得る。また、N_2O分子の脱離のステップの変換は、これまでプロトン酸との作用により行っているが、変換効率が一番低いので、このステップを他の熱や光といった外部刺激による変換へと展開し、効率の向上を図る。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Coord. Chem. Rev
巻: 256 ページ: 468-478
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Journal of Organometallic Chemistry
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