我々は、二核ルテニウム錯体を用いて2分子の一酸化窒素(NO)分子を隣接配置させることにより、特異なN-Nカップリングを見出した。さらに、この錯体を用いることにより2分子のNOを2つのプロトンおよび2電子により、亜酸化窒素(N2O)と水へと変換する独自のNO還元サイクルを達成した。この系を発展させるため、NO分子と他の小分子を二核ルテニウム錯体上に隣接配置させ、特異な結合の発現を期待した。 ジニトロシル二核錯体をアジ化ナトリウムとアセトニトリル中で反応させることにより、モノアセトニトリル/ニトロシル二核錯体を単離した。還元反応による特異な結合を誘起させるため、この錯体の還元反応を行ったところ、アセトニトリル配位子が脱離してしまう結果となった。還元反応させるためには、アセトニトリル配位子の置換反応により、より強固に結合する配位子に交換する必要があった。そこで、この配位子置換反応について調査した。アセトニトリル配位子は、一酸化炭素(CO)やイソシアニド(tBuNC)配位子と容易に置換し、カルボニル/ニトロシルおよびイソシアニド/ニトロシル二核錯体をそれぞれ得た。還元反応を行ったところ、それぞれの還元体の単離に成功した。赤外吸収スペクトルにおいて、NOの伸縮振動が大きく低波数シフトしていることが確認された。イソシアニド/ニトロシル二核錯体の還元体では、単結晶が得られたのでX線構造解析により構造解析を行った。そうしたところ、ラジカルNO配位子に特徴的なhalf bent型構造をとっていることが分かった。しかし、隣接したイソシアニド配位子との相互作用は見られなかった。
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