研究課題/領域番号 |
22685010
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大村 智通 京都大学, 工学研究科, 准教授 (00378803)
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キーワード | 合成化学 / 遷移金属触媒 / メタロイド元素 / 結合形成 / 反応活性種 / シリレン / 有機ケイ素化合物 / 有機ホウ素化合物 |
研究概要 |
ケイ素やホウ素などメタロイド元素の二価反応活性種の有機合成的応用に注目し、遷移金属を用いる等価中間体の形成に基づいた新触媒反応の開発と、これによる有機ケイ素化合物や有機ホウ素化合物の革新的合成手法創出を目的として本研究に取り組んでいる。交付申請書研究実施計画に記載した「研究項目3.アミノボランの脱離に基づいた反応活性種の発生法ならびに不飽和炭化水素との触媒的結合形成反応の開発」の検討中に、パラジウム触媒存在下シリルボランがピリジンに付加し、N-ボリル-4-シリル-1,4-ジヒドロピリジンが生成する予想外の新反応を見出した。本反応では、芳香族性を失う一見不利な分子変換がホウ素-窒素結合形成が駆動力となることで達成されており、同様の結合形成であるアミノボランの脱離を伴った触媒反応開発に応用可能な重要な基盤的知見が得られた。一方、メタロイド元素活性種の前駆体調製過程において、塩素が置換したメチルシランの炭素-水素結合とシリルボランのケイ素-ホウ素結合がイリジウム触媒により相互に交換し、炭素-ホウ素結合とケイ素-水素結合が形成される新反応を見出した。本触媒過程にはケイ素-イリジウムもしくはホウ素-イリジウム中間体が関与する素反応過程が含まれていると考えられることから、メタロイド元素活性種の発生と触媒的結合形成に応用可能な重要な知見が今後得られるものと期待できる。次に「研究項目4.二価反応活性種の新発生法に基づいた新触媒反応開発」において、ジエニルリン酸エステルを基質に用いたシリレンの二重挿入反応を検討した。その結果、ジメチルフェニルホスフィンを有するパラジウム触媒が効果的であること、ならびに2分子目のシリレンはケイ素-酸素結合に挿入することが明らかとなった。これらはパラジウムシリレン中間体の形成と反応性に関する新知見であり、特徴ある新触媒反応の設計と開発に資すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アミノボランの脱離に基づいた二価反応活性種の発生法について、ケイ素以外の元素への展開は十分には行えていないものの、ホウ素-窒素結合形成を鍵とする触媒過程について重要な知見が得られ、本研究課題で目的とするメタロイド元素反応活性種の効率的発生と触媒的結合形成に関して、十分な成果が得られたと考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に見出したホウ素-窒素結合形成を鍵とするピリジンへの触媒的付加反応、ならびに炭素-水素結合とケイ素-ホウ素結合の触媒的結合交換反応は、メタロイド遷移金属中間体の形成と反応が関与する素反応過程を経て進行していると考えられる。このため、これらの反応についてさらに詳細な検討を行うことで、メタロイド元素反応活性種の効率的発生と触媒的結合形成に有益な基盤的知見をさらに得ることができると期待できるので、これを踏まえ今後の検討を行う。
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