研究概要 |
ケイ素やホウ素などメタロイド元素の二価反応活性種の有機合成的応用に注目し、遷移金属を用いる等価中間体の形成に基づいた新触媒反応の開発と、これによる有機ケイ素化合物や有機ホウ素化合物の革新的合成手法創出を目的として本研究に取り組んだ。平成24年度は、交付申請書研究実施計画に記載した「研究項目4.二価反応活性種の新発生法に基づいた新触媒反応開発」に関する(a)二価反応活性種の効率的発生に基づく触媒的結合形成反応の開発、ならびに平成23年度に見出した素反応過程に関する(b)ホウ素―窒素結合形成を鍵とする触媒反応開発、(c)ケイ素上有機基の結合活性化に基づく触媒反応開発、の三つの細項目を実施した。(a)では、リン配位子を有するロジウム触媒が、シリルボランからのシリレン発生と不飽和結合との結合形成に有効であることを見出した。本触媒存在下、2-(α-スチリル)チオフェンとシリレンとの[4+1]環化付加が効率よく進行し、含ケイ素二環式化合物を与えることを明らかとした。(b)では、ロジウム触媒存在下ヒドロボランがピリジンに効率よく付加し、脱芳香化したN-ボリル-1,2-ジヒドロピリジンを高収率で与えることを見出した。さらに、二つの窒素原子を有するピラジンに対しては、シリルボランやジボロンの付加が遷移金属触媒の非存在下においても進行することを明らかにした。これらの結果は、ホウ素―窒素結合形成が触媒反応および非触媒反応いずれにおいても強い駆動力となることを示唆している。(c)では、イリジウム触媒存在下塩素が置換したケイ素上メチル基の炭素―水素結合を炭素―ホウ素結合に変換する反応について詳細に検討し、塩素原子の配向基としての機能とケイ素元素の置換による特異な反応促進効果について明らかとした。これらの知見は、メタロイド遷移金属中間体の生成と反応制御に基づく特徴ある新触媒反応の設計と開発に資する。
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