研究概要 |
従来の重合法では側鎖官能基の平均的な密度の制御された高分子の合成は比較的用意であるが、その分布を完全に制御することは不可能であった。本研究ではジイミン配位子を有するパラジウム錯体によるオレフィン類の異性化重合を利用し、様々な官能基の密度、分布が完全に制御された高分子の合成と、その機能の探索を目指して研究を行っている。本年度は、特に五員環および六員環のシクロアルカン構造を主鎖に有する高分子の立体選択的合成と、その物性について検討を行った。 我々はこれまでにパラジウム錯体が4-アルキルシクロペンテンの付加異性化重合を引き起こし、シクロペンタン骨格が主鎖上に一定の間隔で配置された高分子を与えることを見いだしている。しかも、環の立体構造が全て一定にそろった高分子は液晶性を示す。本年度は同様の触媒を用いた3-アルキルシクロペンテンの異性化重合も進行することを見いだした。しかもその重合は、モノマーの光学純度に応じて繰り返し単位の構造が変わるという従来にない特徴を有していることが明らかとなった。重合において鍵となるのは、用いている錯体が動的なキラリティーを有しているという点であり、さらに光学活性なモノマーによってその配向が誘起されていることが分かった。光学活性な3-メチルシクロペンテンを用いることにより得られる光学活性なポリマーは、従来合成に成功していたラセミ体のポリマーに対してより高く狭い温度範囲で液晶性を示すことが示唆された。 アルケニルシクロヘキサンも同様に重合し、六員環構造を主鎖に有するポリマーが得られることが分かった。その立体構造はトランス-1,4型に制御されている。この構造を高分子主鎖中に組み込むことは、従来非常に困難であった。得られたポリマーは非常に高融点であることが分かった。
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