研究課題/領域番号 |
22685012
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
竹内 大介 東京工業大学, 資源化学研究所, 准教授 (90311662)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 立体選択的重合 / 環化重合 / 異性化重合 / パラジウム錯体 / シクロオレフィンポリマー / 液晶高分子 |
研究概要 |
本研究ではジイミン配位子を有するパラジウム錯体によるオレフィン類の異性化重合を利用し、様々な官能基の密度、分布が完全に制御された高分子の合成と、その機能の探索を目指して研究を行っている。一昨年度までに、パラジウム錯体が4-アルキルシクロペンテンや3-アルキルシクロペンテンの異性化重合を引き起こし、シクロペンタン骨格が主鎖上に一定の間隔で配置された高分子を与えることを見いだしている。また、アルケニルシクロヘキサンやメチレンシクロヘキサンも同様に重合し、シクロヘキサン環を含んだ高分子が生成する。パラジウム錯体は様々なアルキル基を有する1,6,11-トリエンのダブル環化重合を引き起こし、ビスシクロペンタン環を有するポリマーを与えることも見出している。 昨年度は、様々な官能基の導入されたアルケニルシクロヘキサン、メチレンシクロヘキサンの合成を行い、その重合を行った。コレステロール骨格を有するメチレンシクロヘキサンを合成し、その単独重合および一酸化炭素との共重合について検討を行ったが、ポリマーは得られなかった。一方、4-アルキル-1-メチレンシクロヘキサンおよび2-アルキル-1-メチレンシクロヘキサンの重合は進行し、ポリマーが得られた。 アルキルシクロペテン類の重合について、得られるポリマーの光学純度の向上を目指して、キサンテン骨格を有するS形C2対称ジイミン配位子を合成した。 両親媒性官能基や発光性官能基を導入した様々なビスアルコキシメチルヘプタジエンの重合により、それらの側鎖官能基が均一に分布したポリオレフィンの合成を行った。また、親水性官能基および疎水性官能基をトリエンモノマー上に導入し、ダブル環化重合を行うことにより、それらの官能基がポリマー上に交互に配置した両親媒性ポリマーの合成について検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではすぐれた機能をもつポリオレフィンの創製を目指し、種々の極性官能基の組み込まれた環状置換基を有するポリマーの合成を行なっている。 従来合成に成功している環状置換基を有するポリマーは、その大部分が環状構造の立体がトランスに制御されたものであった。昨年度見いだしたアルキル置換メチレンシクロヘキサンの重合で得られたポリマーの環状構造は、シスに制御されている可能性が示唆される。これらは異なる熱物性を示す可能性が高い。 昨年度はさらに、両親媒性官能基や発光性官能基などを導入した様々なジエンの重合が可能であり、それらの側鎖官能基が均一に分布したポリオレィンが得られることを見いだした。さらに、それらの官能基が導入されたトリエンモノマーのダブル環化重合も進行することを見いだした。これらの結果は、親水性および疎水性官能基を有するトリエンモノマーのダブル環化重合により、これらの官能基がポリマー上に交互に配置した両親媒性ポリマーの合成が可能であることを示唆するものであり、今後検討を行う。 以上のように、高機能ポリオレフィンを創製できる合成上の問題がおおむね解決された。今後1年間で、ポリオレフィンの合成と、その物性・機能開拓について検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
昨年に引き続き、パラジウム錯体触媒による種々の環状置換機を含むオレフィンの重合を行う。さらに、昨年度までに合成した種々の環状置換基を含むポリオレフィンの機能評価に重点をおく。 これまで合成に成功しているポリマーの環状置換基の立体構造は、ほとんどトランスに制御されている。本年度は、シスに制御されたポリマーの合成を行い、立体構造の違いによる物性の違いについて検討を行う。具体的には、4-アルキル-1-メチレンシクロヘキサンや、4-アルキル-1-アルケニルシクロヘキサンをモノマーに用いて重合を行う。 昨年までに、アルケニルシクロヘキサンやアルキルシクロペンテン、メチレンシクロヘキサンなどの異性化重合に成功しており、主鎖上に五員環や六員環構造を有する種々のポリマーを得ている。特に、アルキルシクロペンテンの重合により得られる五員環を含むポリマーについては液晶性を示すことを見いだしている。同様の構造をもつ光学活性なポリマーについては、キラルな液晶相を示すことが示唆されているが、これまでにアルキルシクロペンテンの不斉重合については。部分的にしか成功していない。本年度は光学活性錯体の合成・単離と、それを用いた不斉重合について検討を行う。 親水性部位や発光性部位、反応性部位などの機能性官能基を有するトリエンのダブル異性化重合では、それらの官能基が位置選択的に導入されたポリマーが得られることを明らかにしている。本年度は、昨年に引き続き親水性基と疎水性基が交互に導入されたポリマーの合成について検討し、その水溶液中の挙動を明らかにする。
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