本研究では、光照射により解裂可能な結合点を有するジブロック共重合体を調製し、ミクロ相分離状態にあるジブロック共重合体に光を照射することで結合点を解裂させ、昇温に伴う界面の揺らぎ(界面張力波)の増大、さらには、ミクロ相分離状態からドメインの合一を経てマクロ相分離に至る過程を明らかにすることを目的とする。前年度までの研究では、光照射により解裂可能なオルトニトロベンジル(ONB)基を結合点に有するポリスチレン(S)とポリメタクリル酸メチル(M)のジブロック共重合体(S-ONB-M)を用いて、紫外光照射と熱処理に伴うバルクの構造変化について研究を行ってきたが、S-ONB-Mの偏析力が弱いため界面が比較的厚いことおよび紫外光照射により100%開裂しない試料が含まれていることが問題であった。今年度は、構成成分と合成方法を見直した。試料として、偏析力の大きな組み合わせのSとポリエチレンオキシド(EO)を選択してS-ONB-EOを合成し、溶液中の解裂挙動とバルク膜の相分離構造について検討した。分子量が34 kg/mol、Sの体積分率が0.50の単分散S-ONB-EOを調製した。S-ONB-EOのベンゼン溶液中に350 nmの紫外光を照射することで、SとEOが100%解裂することを確認した。室温におけるS-ONB-EOのバルク膜の構造を小角X線散乱(SAXS)測定により評価し、ラメラ構造を形成することが確かめられた。現在、S-ONB-EO薄膜の構造評価と紫外光照射による構造変化について検討を行っている。
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