研究概要 |
本研究ではレアメタルに頼ることなく、入手しやすい軽元素(C,N,O,Si,S)のみによって構成され、様々な物理刺激(熱、光、力)および化学刺激(ガス、有機溶剤、イオン等)によって光電特性を劇的に変換する、ダイナミック発光素子の創製とその変換機序の解明を目的としている。上記目的を達成するため本年度は、以下の3項目を行った。 1.多環式芳香族化合物に酸性基を導入した機能団分子を合成した。具体的には、ジフェニルアントラセンジスルホン酸を合成した。得られた機能団分子を種々のアミンと組み合わせて、複合体物質(スルホン酸アミン塩等)を作成した。また、複数の機能団分子、あるいはアミンを用いて、3成分混合複合物質を作成した。 2.良好な結晶を作成し、単結晶X線構造解析により超分子集合を明らかにした。放射光施設SPring8(ビームラインBL38B1およびBL19B2)を利用し、研究室では測定が困難な極めて小さな結晶の構造解析にも成功した。 3.ユビキタス元素のみで作成した有機発光体が外部刺激に応じて、発光強度および発光色を変化させることを発見した。この発光変換では単結晶状態を保ちながら、ミクロスコピックに構造が変化していることが分かった。この結果と、種々の分光学的測定により、これらの作用機序を明らかとした。
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