研究課題/領域番号 |
22685017
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
瀧 真清 電気通信大学, 情報理工学研究科, 准教授 (70362952)
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キーワード | NEXT-A反応 / L/F-転移酵素 / tRNA / アミノアシルtRNA合成酵素(ARS) / N末端ルール / ユビキチン化酵素(Ubr1) / Huisgen付加反応 / 不安定化蛋白質 |
研究概要 |
真核生物からの不安定化蛋白質探索を試みた。 1.酵母ゲノムDNAクローンライブラリーを購入し、この中から、N末端ルールや蛋白質分解系に関連すると考えられる遺伝子を数百個ピックアップした。これらを全て網羅的に、N末端ルールに関する遺伝子(ubr1)を欠損させた変異酵母、および野生型酵母へと形質転換し、それら全ての蛋白質を独立に発現させて各々の抽出液を作製した。変異酵母の抽出液中には、不安定化蛋白質が蓄積されることを期待した。なお、各クローンDNAの各翻訳産物は、各酵母由来と蛋白質HAタグおよび抗体由来ZZドメインタグとの融合蛋白質になっている。野生型酵母に対しても、同様の形質転換および蛋白質発現を行い、比較対照実験として用いた。抽出液をSDS-PAGE後のCBB染色、および抗HAタグ抗体を用いたウエスタンブロットにて解析した。解析の結果、ほぼ全ての酵母由来蛋白質の発現が確認された。変異酵母および野生型酵母を用いた時で比較したとき、蛋白質の発現が確認された組の中では、蛋白質量および分子量が変化している組は見あたらず、不安定化蛋白質候補はこの時点では見つからなかった。 2.酵母由来の爽雑蛋白質を取り除くため、上記発現させた各蛋白質に対してIgG-Sepharoseを用いたプルダウン精製を行った。精製した各蛋白質に対して、申請者の標識法(NEXT-A反応)を用いて、不安定化蛋白質候補のN末端にのみバイオ直交性反応点を持つ非天然アミノ酸による標識を試みた。さらに、このアミノ酸上での反応点特異的な蛍光標識を試みた。標識操作の後、蛋白質をSDS-PAGEにより分子量分画し、蛍光イメージャーによるゲルイメージングを行ったが、不安定化蛋白質候補は見つからなかった。 3.本実験を行う過程で、人工的な不安定化蛋白質(SF-GFP;モデル蛋白質)のN末端に対してNEXT-A反応を行うことにより、部分環状構造を持つ蛋白質へと変換可能であることが分かり、論文としてまとめ、発表を行った(Chem.Commun.,2011他)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
N末端ルールに関する転移酵素遺伝子を欠損させた大腸菌を用いた時、および大腸菌と異なる生物種(出芽酵母)由来の細胞抽出液を用いた時のいずれも、申請者の手法(NEXT-A反応)を用いた人工不安定化蛋白質の濃縮・同定は成功している一方で、未知の天然不安定化蛋白質の同定には至っていない。未知蛋白質のこれら抽出液中の濃度が、当初予定していたよりも大幅に少ないと考え、上記DNAクローンライブラリーからの過剰発現による探索を行うことで解決を試みたが、同様の結果を得た。今後はNEXT-A反応を用いて、生物抽出液から出発するのではなく、以下12項に示したdenovoでの不安定化蛋白質探索法を行うことで問題解決をはかる。
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今後の研究の推進方策 |
不安定蛋白質は大腸菌内で極めて迅速に分解されるために、不安定蛋白質のL/F転移酵素による認識も極めて迅速に行われなければならない性質を利用して探索を行う。N末端から12残基までをランダム化したファージディスプレイ用denovoペプチドライブラリー中から、申請者の標識法(L/F転移酵素を用いるNEXT-A反応)にて、不安定化蛋白質のN末端配列候補を探し出す。具体的には、ペプチドライブラリーのN末端に、本反応によりバイオ直交性反応点を持つ非天然アミノ酸を短時間で標識する。さらに、このアミノ酸上の反応点特異的なビオチン標識を行う。ライブラリーペプチドのうち、ビオチン標識されたもののみを釣り上げ、遺伝情報を増幅させる。この操作を数ラウンド繰り返し、不安定化蛋白質のN末端配列候補を増幅して、それらのアミノ酸配列を決定する。このアミノ酸配列と類似の配列を持つ大腸菌由来蛋白質を、データベース検索することで決定する。次に、本蛋白質をN末端ルールに関する転移酵素遺伝子を欠損させた大腸菌中で過剰発現させることで、N末端ルールに従う不安定蛋白質であることを確かめる。
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