de novoでの不安定化蛋白質探索実験を①原核生物および②真核生物の両面より試みた。①:大腸菌でのN末端ルールに則る不安定蛋白質は、細胞内で極めて迅速に分解される必要があることから、不安定蛋白質のL/F転移酵素による認識も極めて迅速に行われる必要があると考えた。N末端から12残基までをランダム化したファージディスプレイ用de novoペプチドライブラリー中から、不安定化蛋白質のN末端配列候補を探し出すべく、L/F転移酵素に短時間で強く結合するペプチド配列の選択を行ったが、バイアス等の問題が生じた。一方で一連の過程において、基質ペプチドのN末端から2残基目の配列によって、L/F転移酵素による認識速度にある程度の差異があることを見いだした。2残基目の配列を網羅的に変化させて、そのそれぞれにおける反応速度を詳細に解析を行うことで規則性を見いだし、N末端ルールに則る不安定蛋白質との関連性を考察し、FEBS Open Bio誌に論文発表を行った。②:N末端則関連遺伝子欠損株(ΔUBR1など)においてN末端則基質を過剰発現した場合、細胞の表現型に異常が現れるのではないかと推測した。そこで、真核生物である出芽酵母を用いてN末端則の基質探索を行うため、ランダム化したペプチド遺伝子をコードするベクターライブラリーを構築した(Pept. Sci.)。ベクターは酵母シャトル型ベクターを用い、GAL1/10プロモーター下にグルタチオンS-転移酵素(GST)遺伝子、ユビキチン遺伝子(UB)、および12残基のランダム化ペプチド遺伝子(X12)をタンデムに配列した。ペプチドは融合タンパク質GST-Ub-X12として翻訳され、翻訳後に脱ユビキチン化酵素によるプロセッシングを受け、X12のペプチドが遊離する。大腸菌のケミカルコンピテントセルへの導入効率が極めて悪いため、現在これを改善している。
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