研究課題
本研究は、自然界の有機無機複合体であるバイオミネラルの形成プロセスおよび構造を応用した材料合成を新しい方向へ展開することを目指す。これまで無機材料が中心であった生物にならう材料合成を、有機分子の結晶・高分子などのより幅広い物質・材料系へ積極的に展開し、有機結晶や高分子の成長制御と階層構造の構築を目指す。平成23年度には、以下の3つの目的に沿って研究を進めた:目的1.バイオミネラルの階層構造をそのまま活用した有機材料の合成、目的2.バイオミネラルに見られる有機結晶の構造解析とそれにならう構造を水溶液から合成する、目的3.有機高分子や結晶の作製に向けた新しい鋳型構造および複合体形成の足場となりうる無機材料の合成。これらの目的に対して得られた成果を述べる。目的1に関しては、ウニのトゲの階層構造体を3次元階層的にコピーしたポリピロールの合成に成功した。これにより、他の組み合わせにおいても同様のことができる可能性を示唆しており、様々な有機材料の形態制御につながると考えられる。目的2に関しては、魚の体表に見られる有機結晶の集合構造に着目し、それを模倣した構造を作製することに成功した。この成果も、他の有機結晶の形態制御が可能であることを示唆している。目的3に関して、チタン・スズ・鉄の酸化物において、ナノ構造を制御した集積構造を構築することができ、有機高分子や結晶の作製のための足場となりうる構造体が得られたと言える。以上のように、目的に示した課題の初期段階を完了することができたと言える。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究全体の目的およびそこから決定された本年度の目的に対して、十分な知見を得ることができ、それらの成果は論文や学会発表にて順調に公開できている。
平成23年度に得られた知見は基礎的なものが多く、次年度以降いかにこの手法を多くの物質系へ展開できるか、機能化するかに重点を置いて推進する必要がある。これまで得られた実験結果やそのメカニズムを追求しながら、新しい物質系での実験を同時に進める予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (11件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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