研究課題
本研究は、自然界の有機無機複合体であるバイオミネラルの形成プロセスおよび構造を応用した材料合成を新しい方向へ展開することを目指すものである。生物にならう材料合成を無機材料からより幅広い物質・材料系へ積極的に展開し、有機結晶や高分子材料の成長制御と階層構造の構築を目指す。平成24年度は、平成23年度の成果を多様な材料へ展開する。具体的には、(1)バイオミネラルの階層構造やその類似構造を有する材料をそのまま3次元的に転写した無機高分子、有機高分子、有機結晶の合成、(2)バイオミネラルに見られる有機結晶にならう形態と配向性が制御された有機結晶の作製、(3)これらの構造形成による機能開拓を目指して研究を行った。(1)の成果として、実際にウニのトゲ・カイロウドウケツ・炭酸カルシウム球状多孔質粒子・硫酸カリウム/ポリアクリル酸多孔質構造体を、ポリピロール・ポリ-3-ヘキシルチオフェン・シリカなどの高分子へ転写することが可能であった。また、酸化亜鉛結晶の空隙にもポリピロールを転写することで、酸化亜鉛/ポリピロールの複合同軸構造を行った。(2)の成果として、魚の体表にならう有機結晶の形態と配向の制御に着想を得て、グアニンなどのプリン誘導体結晶の形態と配向を制御することができた。(3)の成果として、特に、酸化亜鉛/ポリピロール複合同軸構造において、光照射のon-offに伴う大きな光電流の変化を観測することができた。これは、光スイッチ材料などへの応用が期待できる。これらと平行して、有機材料に形態を与えるための、鋳型となる階層構造を有する無機材料の合成にも成功している。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究全体の目的およびそこから決定された本年度の目的に対して、十分な成果を得ることができ、それらの成果は論文や学会発表にて順調に公開できている。
平成24年度の研究において、モノマーの導入とその後の重合による階層構造から有機高分子への形態形成は様々な物質系においてできることがわかってきた。今後は、有機高分子のみならず有機結晶への多様な形態・階層構造の転写を目指す。また、これまで水に溶解する有機分子の結晶において形態や配向性の制御を行ってきたが、今後は水に不溶な有機分子すなわち有機溶剤からの結晶化によっても同様の制御を行う。以上のように、これまでのアプローチを新しい物質系へと展開し、同時に機能開拓を進めていく予定である。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (5件) 図書 (1件)
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