研究概要 |
クリックケミストリーに分類される反応は、温和な条件下で定量的に進行する付加反応である。現在知られているクリックケミストリー反応は、銅触媒存在下でのアルキンとアジドの付加環化反応やチオールとアルケンの付加反応等に限られており、新たな結合部位が発色団とは成りえない。本研究では、ドナーアクセプター型色素を生成するアルキンとアクセプター分子のクリックケミストリー反応に着目し、様々な色素構造を高収率で高分子に導入する方法を確立する。 アルキンとアクセプター分子のクリックケミストリー反応を用いてポリウレタン誘導体の側鎖にドナーアクセプター部位を構築した。アクセプター分子としてテトラシアノエチレン(TCNE)を用いた場合には赤色、7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)を用いた場合には緑色のポリマーが得られた。また、側鎖アクセプター部位のシアノ基が銀イオンに多価配位することで、電荷移動吸収バンドの長波長シフトが起こることを見出した。すなわち、銀イオンを添加することでTCNE付加体は赤色から桃色へ、TCNQ付加体は緑色から黄緑色へと変化した。さらに、前駆体高分子をITO電極上に塗布した後、電気化学的に酸化すると青色へと変化した。この青色ポリマーは不活性雰囲気下では失活せず、高い化学的安定性を有していた。 以上より、アルキンとアクセプター分子のクリックケミストリー反応、高分子錯体の形成、エレクトロクロミズムを組合せることで、一つの前駆体高分子からほとんどの色彩を創り出せることを明らかにした。
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