本研究は、高分子ゲルで固定化した高配向コロイド結晶膜の弾性特性を利用して、レーザー発振の波長チューニングである。 コロイド微粒子が自己組織的に3次元規則配列した構造、すなわちコロイド結晶に着目した。粒径が約120 nmの微粒子でできたコロイド結晶の高分子ゲル膜を不揮発性液体であるイオン液体を用い永続的に安定化し、機械的応力による波長可変なレーザー発振に成功した。蛍光色素を含むイオン液体溶液でコロイド結晶ゲル膜を安定化すると、光励起によってレーザー発振することを見出した。そのレーザーのスペクトル幅は0.06 nmと非常に狭く、世界トップレベルの値であった。さらに、コロイド結晶ゲル膜に機械的圧縮応力を加えるとレーザー波長は連続的に短波長シフトし、可逆的な波長可変レーザー発振を実証することができた。 通常、色素溶液レーザは溶媒の蒸発を防ぐために、蛍光色素溶液は厳密な温度管理で密閉された流路内を循環しているが、イオン液体は不揮発性なので、乾燥大気下の開放系で操作しても良い。しかも、光共振器は数百μmの厚みのコロイド結晶ゲル膜なので、大量な色素溶液を必要とせず低コストで低環境負荷なレーザ発振システムになり得る。さらに、高分子材料を使っているので、柔軟性で加工性を持った新しいレーザデバイスが期待できる。
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