本課題は室温で高い磁気抵抗比が観測された二重トンネル接合素子の磁気抵抗効果の解明を目的としている。平成22年度は、高い磁気抵抗比の起源を明らかにするため、二重トンネル接合素子以外にも様々な素子構造について系統的に評価を行った。その結果、二重トンネル接合素子以外の一重トンネル接合素子においても高い磁気抵抗比か観測され、その系統的な評価から、接合素子が高抵抗であることが高い磁気抵抗比を得るための条件であることがわかった。つまり、トンネル接合素子の構造としてはMgO膜厚を厚くした場合、一重のトンネル接合素子でも高い磁気抵抗比が得られた。実際に高抵抗の試料を測定しながら測定糸の検証を行った結果、高い磁気抵抗比が得られた理田は、測定装置内にある保護回路が作動してバイパス電流が流れたことが原因であった。しかし、電流-電圧曲線が線形である単純な抵抗体と保護回路のみでは高い磁気抵抗比は得られておらず、非線形性を示すトンネル接合と保護回路を組み合わせないと高い磁気抵抗比は得られないことがわかった。装置の保護回路自体はダイオードと抵抗体の並列回路となっているだけであり、素子として集積化させることは難しくない。以上の成果は、回路構成を工夫することにより磁気抵抗比を飛躍的に高くすることが可能であることを示唆しており、保護回路を自作してトンネル接合素子と組み合わせた回路を作成して検証することが重要であると考えられる。
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