本研究では、引き上げ(CZ)法ゲルマニウム(Ge)結晶成長において、無転位成長を実現できる酸化ホウ素(B_2O_3)で覆われたGe融液からのGe単結晶育成について、酸素の輸送((1)B_2O_3からの溶解、(2)石英(SiO_2)るつぼからの溶解、(3)融液表面からの蒸発、(4)結晶中への偏析)現象を解明するとともに、(5)酸素含有Ge結晶の強度評価と転位運動についても解明することを目的とする。平成22年度は以下の知見を得た。 (1)本研究費で小型結晶引き上げ装置を選定、購入し、直径1インチのGe単結晶を育成するための炉内を設計、整備し、環境を整えた。 (2)B_2O_3でGe融液の全面を覆い、かつ酸化ゲルマニウム(GeO_2)粉末を意図的に融液に加えることによって、結晶中の転位密度を10^3cm^<-2>以下に抑えたままGe結晶中の格子間酸素濃度を6×10^<17>cm^<-3>程度まで高めることができることを明らかにした。 (3)(2)の結晶成長系において、酸素は石英るつぼやB_2O_3そのものの分解によって生じるのではなく、GeO_2がB_2O_3存在下で分解されて生じ、融液表面がB_2O_3で完全に覆われていない場合には、過剰酸素は融液表面からGeOとなって蒸発することを見い出した。 (4)(2)の結晶成長系での酸素の偏析係数は1~1.4であることを明らかにした。ただし、この値は結晶成長中の酸素の分解、蒸発現象も含んでおり、見かけ上の値であって、真の偏析係数決定には分解、蒸発現象を排除して検討する必要があるという課題を見い出した。
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