従来の遅延時間変調パルス対励起型走査トンネル顕微鏡により半導体中でのキャリア励起・緩和過程を観測した結果が、Nature Photonicsに掲載された。これにより本測定方法の非常に高い空間分解能(~1nm)と時間分解能(~1ps)が実証された。その後、測定原理に関する理解を深めるため観測信号の測定条件依存性を調べ、結果を科学誌に投稿した。測定方法の理解は、測定精度の向上や新たな応用可能性を探す基礎となる。 時間分解能向上のため、ごく短いパルスを発生可能なレーザー発振器を導入した。本装置は外部に位相補正用の光学系が必要となるが、プリズムペアを用いた補償光学系を構築し、30fs程度のパルスを安定して得られることを確認した。これは従来の150fsと比較して5倍の向上に当たる。また、新たな遅延時間変調方式により、2系統のプローブパルスを測定上問題のないレベルまで均質化できることを確認した。 超高速過程を測定する場合にポンプとプローブの干渉が問題となることを以前我々が指摘していたが、この問題を解消する手法を新たに考案した。その実証のため位相変調器を購入した。実証実験の後、特許申請予定である。 今後予定しているカーボンナノチューブの分子振動計測実験について、直径と分子振動周波数、そして励起波長の関係を調査し、測定対象として有力な候補となるチューブ試料を選定・手配した。将来の測定対象として有機半導体についても検討中である。
|