本研究の最終的な目標は、共役π電子系有機分子・高分子の光電子特性を、ナノ領域で最大限に引き出すと同時に、新たなアプローチから有機非線形機能や光位相をナノ光空間において操作し、極低消費エネルギー・超高速動作の非線形光スイッチング素子の実現や、光・電気ハイブリッド制御による革新的な有機アクティブ光制御素子を創出することである。研究初年度であるH22年度では、共役π電子系有機分子・高分子と異種材料(半導体)とをナノスケールで多次元的に組み合わせた独自の有機ナノ・ヘテロ格子構造の創製を目指し、それを実証した。有機ナノフォトニックデバイスの作製を実現するためには、有機材料特有の、分子への深刻な加工ダメージの問題や、波長オーダーの光閉じ込めを困難とする低屈折率性、デバイス耐久性の問題など、幾つかの大きな技術的バリアーを克服する必要があったが、本研究では、微細加工ダメージや低屈折率性の問題を解決する有機ナノ・ヘテロ格子構造を提案し、それを有機ソフトマテリアルの特性を活かした独自のプロセス技術を開発することによって作製し、その定量的な素子作製精度評価および光学特性評価を行った。また3次元時間領域有限差分(3D-FDTD)法による素子構造の理論的動作解析を素子作製とコンカレントに実行し、1チップ内で複数の光機能性(低ロス伝搬部、光非線形制御部、電気光学制御部等)を持つ有機ナノ光集積回路を実現するための最適化デザインを行った。
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