研究課題/領域番号 |
22686008
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研究機関 | 独立行政法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
井上 振一郎 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所 ナノICT研究室, 主任研究員 (20391865)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 有機非線形光学材料 / フォトニック結晶 / 光ナノデバイス / 光スイッチ / 光位相制御 / 電気光学効果 / ナノ微細加工 / 光変調デバイス |
研究概要 |
次世代の大容量オンチップ光通信技術を実現するためには、超高速・電気光学(EO)変調デバイスの高集積化・低消費電力化が必要不可欠である。従来のシリコン光変調器は低コスト化、集積化に優れるものの、動作原理としてキャリアプラズマ効果を用いるため、変調帯域が数十GHz以下に制限される問題があった。一方、電気光学(EO)ポリマーは近年、材料性能であるEO係数が飛躍的に向上しており、さらに屈折率分散(光-高周波間)が非常に小さいため、低消費電力化と100GHz以上の超高速動作が見込めるが、屈折率が小さくデバイスサイズはcmオーダーとなり集積化が困難である。ここで本研究(H24年度)では、独自に開発した高い電気光学係数と超高速応答性を併せ持つ有機EOポリマーと、スローライト効果により非線形相互作用の増強が可能なシリコン1次元フォトニック結晶導波路とをハイブリッドしたマッハツェンダ(MZ)型EO光変調器を作製し、その動作実証に初めて成功したので報告する。有機EOポリマーとシリコンフォトニクスを融合するプロセス技術を開発し、ナノオーダーの高い加工精度と有機材料へのダメージ抑制を両立する要素技術を確立した。また提案するEOポリマー/Si融合型1次元フォトニック結晶は、EOポリマーの配向制御に適した構造であることが特徴であり、Siプラットフォームにおいて、バルク状態と遜色ない優れたポーリング特性を示した。非対称MZI素子(L=100μm)において、EO変調特性を評価した結果、スローライト効果による変調効率の向上、及び実デバイス内における極めて大きな電気光学係数(r33=343 pm/V)を達成した。これは現在実用化されているニオブ酸リチウム(LN)光変調器の10倍以上の性能であり、本デバイスの高い優位性を示す結果であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
素子作製・評価へ向けた実験技術開発、理論的アプローチによるデバイス構造の最適化デザイン、デバイス動作の実証ともに、当初の研究計画以上のペースで進行している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、これまでの研究結果を総活用し、実デバイス中での非線形応答の実験的メカニズム解明・評価と高効率化の実証を目指す。 光分散制御による非線形増強効果の具体的評価法として、素子の光分散関係(光バンド構造)と、電気光学(EO)特性等の非線形光学特性の結果とを直接対比することにより、群速度・位相差・非線形光学特性の間の関係性をクリアカットに導き出す。またさらに、バルク素子や通常の光導波路型デバイスなどの従来デバイスとの絶対性能比較を行い、従来デバイスに対して実際上どの程度有利なのかという重要用件を、効率・デバイスサイズ等の観点から数値化する。 以上の検証結果を十分に活かし、共役π電子系有機分子の優れた非線形光学特性とナノフォトニック構造内の非線形相互作用のエンハンスメントを利用することで、光/電気ハイブリッド型の高効率・極低消費電力化を達成した有機ナノ光アクティブ制御デバイスを実証する。
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