研究概要 |
本年度は以下の3項目を実施した.(a)核融合反応で発生する3.0MeVと14.7MeVの陽子をコリメートして固体検出器を用いて同時に計数し,トモグラフィー手法を用いて2種類のエネルギーの陽子発生点すなわちD-DとD-3He核融合反応の空間分布を同定することを目的とし,そのための計測装置と解析手法を構築した.具体的には、本研究目的に必要となる空間分解能,ダイナミックレンジとS/N比を確保しつつ計測時間を最短とするための固定・可動コリメータと検出器のレイアウト,アパーチャ径,可動範囲を設計した.次に,これをIEC核融合装置に設置して実験を行い,所期の性能が得られていることを確認した.(b)本研究対象である環状イオン源駆動IECの解析・再現可能な物理モデルと数値コードを構築することを目的とし,研究代表者の開発した荷電粒子・電磁界・残留ガス分子の相互作用コードに,ビーム対ビーム衝突反応処理ルーチンを追加した.実験結果との比較を通して,必要な計算精度や物理モデルの検討を加え,高度化と改良を進めた.(c)環状イオン源駆動IECの現行機における電界の非対称性がイオンビーム軌道に与える影響を解析し,これを改善するための改良機を設計した.その結果,現行の実験装置では,中心陰極への高電圧導入端子の影響により,電位分布は球対称性が大きく崩れた軸対称分布となっていることと,これが原因でイオンの損失が発生して中心のイオン密度が制限されていることが判明した.また,中心陰極用導入端子を5段分割の多段型にして,4つの中間電位電極形状を数値計算により設計した結果,中心イオン密度が3倍以上向上する可能性があることが分かった.さらに,この設計に基づき,次年度の実験に必要となるセラミックや電極の形状を設計し,一部製作に着手した.
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