研究課題
本研究では、超高感度・広帯域・アレイ性能を兼ね備えたテラヘルツ波検出デバイスとして、超伝導トンネル接合素子(STJ)を用いた検出器開発を推進した。最終年度は薄膜マッチング型STJ検出器の発展形として、伝送線路に見做した長方形形状のSTJ素子でテラヘルツ波を検出するという伝送線路型STJ検出器の性能評価を主に進めた。検出器1画素はニオブ超伝導体の平面アンテナと2個の長方形STJ素子を1/4波長インピーダンス変換線路で接続した膜構造をとる。テラヘルツ波はSTJ素子の長軸方向に伝搬しながら吸収され、最終的に準粒子トンネル電流として読み出す。作製にはニオブ系5層膜【Nb/Al/AlOx/Al/Nb】を採用し、成膜の容易性を重視して各膜厚はサファイア基板上から【150/50/1/50/150 nm】とした。その際、異なるSTJ素子サイズ(長さと幅)をもつ24(=4×6)画素アレイを一枚のフォトマスク上に並べて設計・配置して作製した。アレイの電流電圧特性を評価した結果、作製歩留りは約70%、臨界電流密度40 A/cm2、リーク電流密度は数100pA/um2という比較的良好なSIS特性が得られた。次に、テラヘルツ帯フーリエ変換分光器を用いて光学特性を評価した結果、Nb/Al系STJ素子のギャップ周波数(0.35 THz)を境にして不連続な検出感度上昇を確認し、超伝導体の近接効果を考慮したクーパー対解離(CPB)に起因する直接検出を実証した。また、ギャップ周波数以下(0.25 THz)に急峻な共振ピークを同時検出し、これが光子誘起トンネル現象(PAT)に基づくSTJ素子長軸方向での3/4波長共振であることを明らかにした。本研究で推進したSTJ検出器はCPBとPAT両方の検出プロセスが利用可能であり、この高い周波数選択性は将来のテラヘルツイメージング応用における多様性に繋がると期待される。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Superconductor Science and Technology (SuST)
巻: 25 ページ: pp.075011_1-5
Extended Abstract of 11th International Symposium on High Temperature Superconductors in High Frequency Fields (HTSHFF 2012)
巻: 1 ページ: pp.44-45
Proceedings of 23rd International Symposium on Space Terahertz Technology (ISSTT2012)
巻: 1 ページ: P-46_1-3