研究概要 |
生体吸収性プラスチック複合材料を骨治療材料としてより広範囲に適用するため,強度・剛性の向上か不可欠であり,本年度はフィラー(リン酸三カルシウム,TCP)とマトリックス(ポリL乳酸,PLLA)の界面強度向上及び押出鍛造成形による分子配向の制御を試みた.界面強度向上のため,乳酸モノマー水溶液を用いてTCP表面を処理し,その後熱混練と溶液分散法によるフィラーの分散を行った.乳酸モノマー濃度がある程度までは強度が向上し,その後は劇的に低下することが明らかとなり,これはTCPと結合していない乳酸モノマーがマトリックスであるPLLAと結合するためであることを明らかとした.また,界面処理を施していないTCPについては熱混練よりも溶液分散により分散性がよくなるが,界面処理を施すと,撹拌中にTCP同士が凝集してしまうことも明らかとなった. 押出延伸法については新たに押出部のテーパー角度を変更することにより,押出時に与えるひずみ量を調整することを可能としている一軸押出用の治具を設計・作製し,これを用いてガラス転移温度以上の温度で行った.潤滑することなく押出加工が可能であったのは,100℃以上の場合であったので,押出時の分子配向の緩和も考慮し,100℃と120℃にてテーパー角度及び保持時間の影響を調査した.120℃で成形したスクリューは緩和と結晶化による脆化のため,100℃で成形したものよりも引抜・せん断・ねじり弓強度が低かった.100℃で成形したものに関しては引抜強度は強ひずみ加工したものが高かったが,せん断・ねじり強度については強ひずみ加工したもののほうが低かった.これは分子の配向方向に依存していると考えられ,用途に応じた高次構造制御をする必要性が示唆された. また,同時に,ゲル浸透クロマトグラフィー装置により,加水分解を受けたPLLAの分子量変化についても先行して調査を開始した.PLLA単体では結晶化した試験片が,また複合材料ではフィラー含有率の高いもののほうが分子量低下が早いことが実験的に明らかとなった.
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