研究概要 |
代表寸法が200nm-1000nmのナノ流路における界面動電現象を対象にして,平成22年度から23年度初旬にかけて可視化流動計測に取り組んだ.ここでは,ナノ流路の拘束により鎖状生体高分子の流動性が低下することを実験的に明らかにし,本現象を対象とした理論モデルの構築を行った。この研究成果については,平成23年度に米国機械学会の雑誌論文として掲載されており,高い評価を得ている. 平成23年度後半からは,200nm以下のナノ流路を対象として界面動電現象の計測を実施している.ここでは,可視化計測に加えて,ナノ流路を介した微小電流の計測を行い,流動計測の時間分解能向上を試みている.これにより,これまで困難であった非定常の流動現象を対象とした計測技術を確立できる.これまでに,ナノ流路における生体高分子の流動について可視化と微小電流の同期計測を実施し,生体高分子がナノ流路に侵入し,拘束される過程に対応する信号の取得に成功している.本計測で得られた知見は,近年注目されているナノボアを用いた単分子計測技術への応用も期待できる. さらに,非定常電場および液体流動を利用した鎖状生体高分子の伸長方法を考案し,実験による有効性の検討を行った.そして電極表面近傍における生体高分子のコンフォメーション変化を詳細に計測するため,マイクロ流路の製作プロセスに工夫を加え,流路の接合と電極表面における流動の可視化の両立を実現した.開発した装置により,生体高分子の伸長現象を計測し,コンフォメーション変化の特徴時間に比して非定常電場のそれが短い条件において,伸長現象が顕著であることを明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
2波長蛍光による可視化および微小電流計測を同時に実現する系を構築し,これに基づく流動計測技術を構築する,まず,昨年度と同様に,計測のモデル系として微細加工技術により製作したナノ流路を対象として計測を行う,これにより計測系の有効性・精度について十分に検討する.次に,構築した計測技術を生体細胞の電気穿孔法に適用する.電気穿孔法は,パルス電場の印可により細胞膜を穿孔する方法であり,非定常現象の測定対象モデルとして適している.本計測技術を適用することで非定常現象の計測における課題を洗い出し,新たな技術開発への足掛かりを掴みたいと考えている.
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