研究概要 |
本研究の目的は,都市-地球サブスケールにおけるふく射伝熱機構の実態解明である.ふく射伝熱はスケールの異なる地球温暖化および都市温暖化の2つの温暖化現象において重要な役割を演じていると考えられているが詳細は明らかになっていない。そこで本研究では、まず,GPSラジオゾンデに搭載したふく射熱流束センサーにより,高度約30kmまでのふく射収支を計測する.また,予算が許す範囲で小型航空機に搭載したふく射熱流束センサーにより,高度5km未満の高度別,且つ面的なふく射収支を計測する.これら実測データを整理・統合し,ふく射伝熱の実相を浮き彫りにする.さらに,実測データを「解」とする逆問題ふく射伝熱解析を行い,大気の実質的なふく射物性値(吸収率・放射率など)を導くことを狙っている。初年度(H22年度)は、GPSラジオゾンデによる観測手法の確立を目指して、ふく射センサーをカップリングした新規GPSラジオゾンデを開発し、試作と基本性能評価を行うことができた。当該年度の2011年4月~5月の期間に新規GPSラジオゾンデを仙台市内から複数台打ち上げ、上昇→気球破裂→降下→太平洋着水までの過程においてGPS情報と気温、湿度、ふく射センサー出力などを受信することでふく射熱流束の鉛直プロファイルが得られる計画であったが、東日本大震災が発生したため観測をやむなく延期した(本観測は都市域からゾンデを打ち上げ、偏西風を利用して太平洋に必ず着水させなければならず、仙台市が最適地であった).その後、再び偏西風が卓越する2012年冬期から春先にかけて仙台市において複数ゾンデの飛揚を実施し、貴重な観測値を得ることができた.これにより当初目標としていた都市域下層から成層圏下層におけるふく射収支プロファイルを得ることができた。さらに、観測データに対応するふく射伝熱解析を実施し、ふく射物性値の導出方法を検討することができた。
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