研究概要 |
今年度は主に「レーザーアブレーションによるナノ粒子のサイズ制御」,「炭素源の種類や生成場の圧力・温度がCNT生成に与える影響の検討」,「長尺型DMAによるCNTの長さ選別」に取り組んだ. 「レーザーアブレーションによるナノ粒子のサイズ制御」では,粒子径が3nm以下のナノ粒子の分級を行い,それを触媒とした熱CVDでナノチューブ生成を行った.透過型電子顕微鏡で観察した結果,単層のナノチューブは確認されなかったが,2層のナノチューブが生成されることが分かった. 「炭素源の種類や生成場の圧力・温度がCNT生成に与える影響の検討」では,アセチレンの分圧を変化させてナノチューブを生成し,アセチレン分圧がナノチューブ成長速度に与える影響を検討した.その結果アセチレン分圧2~8Paの範囲でナノチューブの生成速度が毎秒数百nm程度であることが分かった.アセチレン分圧の圧力領域が異なるものの,大気圧で行った実験と比較した結果,ナノチューブの生成速度は,ほぼ同じオーダーであった. 「長尺型DMAによるCNTの長さ選別」では,まず1段目のDMAで触媒となるナノ粒子(ニッケル)を平均粒径17nm程度に分級し,その後にアセチレンを炭素源とした熱CVDでナノチューブを生成した.次に2段目のDMAで長さによる分級を行い,低圧仕様のタンデムDMAシステムでの直径と長さの独立制御を可能とした.また,分級されるナノチューブの平均の長さが長くなるにつれて,標準偏差が大きくなる傾向が見られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の大きな目的であった低圧仕様のタンデムDMAシステムでの直径と長さの独立制御を可能としたことが挙げられる.また,より小さなナノ粒子の分級・ナノチューブ生成に於いても,単層ナノチューブの生成までには至らなかったものの,二層ナノチューブが生成され,単層ナノチューブ生成の目処がついた.
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今後の研究の推進方策 |
目的の一つとなっている単層カーボンナノチューブの生成に於いては,炭素源をアセチレンからアルコールに,また触媒となるナノ粒子も現在のニッケル粒子かコバルトに変更し,より単層ナノチューブを生成し易い条件に変更し,生成を試みる.また現段階では生成されるナノチューブの長さが100~200nm程度に留まっているため,生成時間を長くすることにより,より長いナノチューブ生成を試みる.今年度の研究で,タンデムDMAシステムでの直径と長さの独立制御を可能としたので,来年度はシースガスの流量やDMA電圧が分級に与える影響を検討し,長さ分級における分解能の向上に努める.
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