変調電圧・電流による過渡応答特性評価により燐光発光の過渡応答を解析することで、発光素子の等価回路をモデル化し、その等価回路中のパラメータが過渡応答に及ぼす影響を評価した。時間軸上での燐光有機EL素子の過渡応答を明らかにするために素子に矩形電圧もしくは正弦波電流を印加し、その発光波形の過渡応答の測定を行った。電気励起による発光は低電流密度の領域では素子の回路としての特性の影響を強く受け、電流密度を増加させると燐光材料自体の発光に関する過渡応答特性が得られることを見出した.特に発光効率の低い素子においては、インピーダンス測定により得たコール・コールプロットにおいて負のキャパシタンスが顕著に観測された。過渡特性において負のキャパシタンスの影響を受け、電流密度の立ち上がりの遅れが生じ、発光の立ち上がり特性の悪化に影響していることが分かった。 有機受光素子の変換効率を向上させる手段として、三重項材料のドープによる三重項励起子の利用を検討した。まず単純なフルオレン系高分子材料をホストに用いた単層構造の素子を作製し、有機層電極界面におけるキャリア取り出し効率に対する三重項材料のドープ効果を検証した。ホスト材料の一重項準位より低くかつ三重項準位より高い三重項準位を有する三重項材料イリジウム錯体をドープした素子は、一重項材料アルミニウム錯体をドープした素子や非ドープの素子より大きな光電流を導くことを見出した。すなわち、ホスト・ゲスト材料間のエネルギー準位を考慮することで、三重項材料のドープ効果により励起子の拡散長を長くし、変換効率を向上させる可能性を示せた。
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