研究概要 |
本研究では、申請者が最近世界に先駆けて動作原理の確認に成功したフレキシブルな有機フローティングゲートトランジスタの基盤技術を確立することを目的とする。 今年度は、有機フローティングゲートトランジスタの作製プロセスの確立と動作原理を解明するとともに、メモリ性能を実用レベルまで向上させること目標とした。特に自己組織化膜を金属表面に形成する前処理プロセスとして酸素プラズマを用いるが、このプラズマ条件が自己組織化膜の均一性、絶縁性に大きな影響を与えることが分かっている。今年度、プラズマ条件を最適化し、均一膜の作製を実現した。また、多様な自己組織化単分子膜を金属表面に展開していくプロセスを開拓することができた。具体的には、今までの微細化と高性能化技術を用い、曲率半径が0.1~0.3mmに曲げられる有機トランジスタの試作に成功した。これは2010年11月のNature Materials誌に掲載され、「くしゃくしゃに折り曲げても丸めても特性が劣化しないウルトラ・フレキシブル」な有機CMOSリング・オシレータやTFT(薄膜トランジスタ)アレイ・シートとして話題を呼んだ。この発表におけるCMOS回路には、p型有機半導体に移動度の高いペンタセン(移動度μは0.5cm2/Vs)、n型有機半導体にフッ化銅フタロシアニン(F16CuPc)を採用している(μは0.02cm2/Vs)。また、基盤の平坦化技術を確立し、高い歩留まりを保ちながらゲート絶縁膜を薄くして駆動電圧を下げられた。具体的には、数十nmの凹凸があった市販の12.5μm厚のポリイミド基板上に,ポリイミド前駆体をスピンコート法で塗布し180℃に加熱すると,この前駆体がポリイミドに変わり,基板の凹凸を隠しながら基板と一体化する。この平坦化技術により、平坦化後の凹凸は0.2~0.3nm程度とほぼ原子レベルで平坦となる。これはシリコン(Si)基板を利用した場合に匹敵する信頼性で,薄いゲート絶縁膜とその上の半導体の製造が可能になった。
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