研究課題
本研究では、申請者が最近世界に先駆けて動作原理の確認に成功したフレキシブルな有機フローティングゲートトランジスタ^<*注>(米国Science誌に採択)の基盤技術を確立することを目的とする。近年、有機材料を用いた大面積ディスプレイやセンサ、アクチュエータの研究が盛んに行われているが、これらに不可欠な有機メモリマトリックスは実現されていなかった。申請者は、自己組織化単分子膜に金属電極を埋め込む手法を開発し、世界最小駆動電圧2Vの有機フローティングゲートトランジスタとそれを用いたフラッシュメモリマトリックスを実現した。しかし、「自己組織化単分子膜の不均一性によりメモリ保持時間が短いこと」、「動作機構の解明」、「高速化」など幾つかの課題が残った。本研究では、この作製プロセスを確立し、動作原理を解明するとともにメモリ性能を実用レベルまで高めるための基盤技術の開発に取り組んでいる。初年度より取り組んできた計測技術が確立し、トンネル電流によるメモリの書き込みおよび消去について詳細に計測ができるようになってきた。23年度は、独自に開発したフレキシブル有機トランジスタのHan測定技術を有機メモリに応用し、通常駆動時(2V:読み出し電圧)と高電圧駆動時(6V:書き込み・消去電圧)の際のHall測定を行い、伝導キャリア密度を評価を行うことで、有機フローティングゲートトランジスタの伝導機構、動作原理を突き止めることができた。さらにサブフェムトリットルインクジェットにより微細化を実施し、動作速度に関する検討に着手した。
1: 当初の計画以上に進展している
Hall測定による動作機構に加えて、より実用的な性能を目指して、コンタクト電極幅1ミクロンまでの微細化に着手することができた。
アトリットルクラスの超微量な液滴を制御できるインクジェットによって、有機メモリのチャネル長をサブミクロンまで微細化する。さらに、電極幅を1ミクロンまで微細化することで、寄生容量を1pFまで低減し、10kHz以上で動作する有機メモリを作製する。最終的には、フローティングゲート電極材料もアトリットルインクジェットにより形成し、印刷プロセスで製造された有機メモリで世界最高性能の駆動電圧2V、書き込み消去電圧6Vを実現する。さらに、微細化により放出トンネル電流を抑制し、メモリ保持時間6×10^5秒、書き込み消去回数10^6回を実現する。
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http://www.ntech.t.u-tokyo.ac.jp/