本研究は真正粘菌変形体が外部からの周期的刺激に対して予測や記憶・想起を持つという研究をもとにしたものである。これは外部から周期刺激を与えると生物内部の隠れた振動子が共振した結果、単細胞生物であっても予測や記憶・想起といった知的活動を行う事ができるというものである。一方で生物は歩行などの周期的な動作をする。これらは生物の内部状態に様々な影響を及ぼし、周期的な刺激となる。その結果、生体内の隠れた周期が発現し、生物の行動制御に影響を与える。本研究では、単細胞生物の知的な行動制御や四足歩行動物の歩容遷移現象に対し周期動作と内部状態の共振に着目し、生物のタスク遂行を数値・実機実験により理解するものであった。 四脚動物の歩容遷移現象については、物理的な相互作用のみで歩容遷移現象を引き起こす数理モデルを構築し、その内容について東北大学石黒章夫研究室と共同で実機実験を行った。その結果、予想どおりウォーク・トロットの遷移を自発的に引き起こすロボットの製作に成功した。ギャロップについてはロボットの駆動力・耐久性の問題から実現しておらず、今後の課題として残っている。 単細胞生物の知的制御である容器形状記憶実験についても数理モデル・数値計算は概ね完成しており、現在はこだて未来大学の中垣俊之研究室にて実験を行っている。円形の容器形状を記憶する結果は得られており、正多角形の記憶実験を行う予定である。
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